外国株式の投資信託は、高いリターンを期待できる有力な選択肢です。しかし、運用期間や資産状況、価格変動への耐性は人によって異なります。DCコンサルタントには、加入者のリスク許容度を踏まえ、自分に合う運用を判断できるよう支援する役割があります。
「外国株式を選んでおけば間違いない」と考えていないか?
企業型DCの投資教育や個別相談では、次のような質問を受けることがあります。
「外国株式の投資信託を選んでおけばよいのでしょうか」
「全世界株式のような商品なら一本だけで大丈夫ですか」
「若いうちは株式100%でよいと聞きました」
NISAの普及によって、外国株式や全世界株式に投資するインデックスファンドは、広く知られるようになりました。
インターネットやYouTubeでも、低コストのインデックス型外国株式投資信託を長期間保有する方法がよく紹介されています。
そのため、企業型DCの商品一覧に外国株式型の投資信託があると、
「これを選んでおけば正解だろう」
と思う人がいるのも不思議ではありません。
外国株式の投資信託そのものが、悪いわけではありません。
世界各国の企業へ投資でき、日本だけに投資先を集中させずに済む商品もあります。世界経済の長期的な成長を、資産形成に取り込もうとする考え方にも合理性があります。
より高いリターンを期待するなら、外国株式は有力な選択肢です。
しかし、良い商品であることと、その人に合う商品であることは同じではありません。
企業型DCで大切なのは、最も上がりそうな商品を当てることではありません。
自分はいつまで運用できるのか。
どの程度の下落を受け入れられるのか。
企業型DC以外に、どのような資産を持っているのか。
そうした条件を踏まえ、自分に合う運用を考えることです。
外国株式にはどのような特徴があるのか?
外国株式の投資信託には、多数の海外企業へ分散して投資できるものがあります。
一社の株式だけを買う場合に比べれば、特定企業の業績悪化による影響を抑えやすくなります。複数の国や地域へ投資する商品なら、投資先の地域も分散できます。
一方、株式である以上、価格は大きく変動します。
世界的な景気後退、金融危機、感染症、戦争、金利の変化などによって、短期間で大きく下落することもあります。
外国資産には、為替変動の影響もあります。
投資先の株価が上昇していても、円高が進めば、円で見た評価額が下がる場合があります。反対に、円安が評価額を押し上げることもあります。
つまり、外国株式の投資信託は、
「海外へ分散しているから下がらない」
という商品ではありません。
高いリターンを期待できる一方で、大きな価格変動を受け入れる必要がある商品です。
一本の投資信託を選べば、分散投資になるのか?
外国株式や全世界株式の投資信託には、数百社、数千社へ投資する商品があります。
その意味では、企業や国への分散が図られています。
しかし、一本の投資信託だけで運用する場合、資産の種類としては株式に集中していることがあります。
「世界中の株式に分散していること」と、「資産全体が分散されていること」は同じではありません。
株式とは異なる値動きをする可能性のある債券や、元本確保型商品を組み合わせれば、資産全体の価格変動を抑えられる場合があります。
もちろん、外国株式の割合を高くすることが合う人もいます。
運用期間が長い。
値下がりしても慌てずに続けられる。
当面の生活資金を預貯金で確保している。
企業型DC以外の資産も含めて、全体の状況を把握している。
そのような人であれば、外国株式中心の運用も選択肢になります。
一方、値下がりすると強い不安を感じる人が、周囲に勧められたという理由だけで株式100%を選ぶと、相場下落時に運用を続けられないかもしれません。
理論上の期待リターンが高くても、下落した時点で商品を変更してしまえば、その効果を十分に得られないことがあります。
期待リターンだけで選んでよいのか?
運用商品を比べるとき、どうしてもリターンに目が向きます。
預貯金や債券よりも、外国株式の方が高い収益を期待できると考える人は多いでしょう。
しかし、期待リターンが高い資産は、一般に価格変動も大きくなります。
大きく増える可能性がある一方で、短期間に大きく減る可能性もあります。
そのため、
「最も増えそうだから、全員が外国株式を選べばよい」
とは言えません。
人によって、受け入れられる値下がりの大きさが違うからです。
この違いを考える際に重要なのが、リスク許容度です。
仮に外国株式が一時的に30%下落し、100万円の評価額が70万円になったとします。
「長期運用だから、慌てずに続けよう」
と考えられる人もいます。
一方で、
「これ以上減るのが怖い。すぐに値動きの小さい商品へ変更したい」
と考える人もいます。
どちらが正しく、どちらが間違っているという話ではありません。
同じ年齢、同じ年収、同じ運用期間でも、値下がりへの感じ方は違います。
また、リスク許容度は気持ちだけで決まるものでもありません。
十分な預貯金があるか。
収入は安定しているか。
企業型DC以外に、NISAなどで株式を保有しているか。
退職時にまとまった資金を使う予定があるか。
相場が下落したとき、受け取りを延期できるか。
こうした経済的な条件も関係します。
つまり、リスク許容度には二つの面があります。
一つは、値下がりを受け入れられる心理的な耐性です。
もう一つは、値下がりが起きても生活や将来設計に支障が出にくい、経済的な余力です。
リスクを取れることと、リスクを取りたいことは違います。
外国株式を選ぶ前に、両方を確認する必要があります。
50歳を過ぎて外国株式を選ぶのは危険なのか?
企業型DCの相談では、この質問もよく受けます。
「私はもう50歳を過ぎています。今から外国株式を選ぶのは危険でしょうか」
確かに、50代は20代や30代に比べ、一般に退職までの期間が短くなります。
仮に55歳の人が60歳で企業型DCの資産を全て受け取る予定なら、運用期間は約5年です。
その間に外国株式が大きく下落すれば、受取時までに評価額が回復しない可能性があります。
外国株式は、10年間運用すれば必ず利益が出る商品ではありません。
反対に、運用期間が10年を切れば必ず損をするわけでもありません。
ただし、運用期間が短いほど、相場が下落した後に回復を待てる時間は少なくなります。
では、50歳を過ぎたら外国株式を選んではいけないのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
大切なのは、現在の年齢だけではなく、この資産をいつ使う予定なのかです。
企業型DCの老齢給付金は原則60歳から受け取れますが、必ず60歳ですぐに受け取る必要はありません。
受給開始を遅らせ、それまで運用を続ける選択肢もあります。
また、退職によって企業型DCの加入資格を失った後、資産をiDeCoへ移換して運用を続ける方法もあります。
移換後に新たな掛金を拠出できるか、掛金を出さず運用だけを続けることになるかは、年齢や働き方、公的年金の加入状況などによって異なります。
それでも、退職した時点で必ず現金化しなければならないわけではありません。
55歳から60歳までしか運用しない人と、退職後にiDeCoへ移換し、70歳頃まで受け取りを待つ人とでは、想定する運用期間が大きく異なります。
後者であれば、外国株式も選択肢に入りやすくなります。
一方、退職時に住宅ローンの返済や生活費としてまとまった資金を使う予定がある人は、受取時期が近づくにつれ、値動きの大きい資産の割合を下げることも考えられます。
つまり、「50歳を過ぎたから外国株式は危険」と決めつけるのではなく、「このお金を、いつ使う予定なのか」と考えることが重要です。
外国株式か元本確保型かという二択ではない
企業型DCでは、定期預金や保険などの元本確保型商品が用意されることがあります。
長期間すべてを元本確保型商品で運用すると、高い収益を得にくい可能性があります。物価が上昇すれば、金額は減っていなくても、お金の実質的な価値が低下していきます。
しかし、元本確保型商品を選ぶこと自体が間違いではありません。
受け取りが近い人。
価格変動を強く不安に感じる人。
資産の一部を安定させたい人。
すでにNISAなどで株式を多く保有している人。
こうした人には、元本確保型商品を組み合わせる意味があります。
また、選択肢は外国株式と元本確保型商品だけではありません。
商品ラインアップによっては、国内債券や外国債券へ投資する投資信託、株式と債券を組み合わせたバランス型投資信託もあります。
債券型投資信託は、一般に株式型より値動きが小さい傾向があります。
「元本確保型だけでは収益性が気になるが、外国株式だけでは値動きが大きすぎる」
と感じる人にとって、検討できる選択肢です。
ただし、債券型投資信託も元本保証ではありません。
金利の変化や発行体の信用状況によって値下がりすることがあります。外国債券では、為替変動の影響も受けます。
バランス型投資信託も、名称だけで判断してはいけません。
株式と債券がどのような割合で組み入れられているかによって、値動きは異なります。
ターゲットイヤー型という選択肢もある
商品ラインアップによっては、ターゲットイヤー型の投資信託が用意されていることがあります。
ターゲットイヤー型とは、想定する退職時期などの目標年に近づくにつれて、一般に株式の割合を減らし、債券など比較的値動きの小さい資産の割合を増やしていく商品です。
若いうちは株式の比率を高め、受取時期が近づくにつれて値動きを抑えるという資産配分の変更を、商品内で自動的に行います。
自分で定期的に資産配分を見直すことが難しい人にとっては、検討しやすい選択肢の一つです。
ただし、ターゲットイヤー型なら、誰にでも合うわけではありません。
同じ年に退職する人でも、企業型DC以外の資産、退職後に必要な資金、価格変動への考え方は異なります。
また、目標年に近づいても一定の株式を保有する商品や、資産配分の変更方法が異なる商品もあります。
どの年を目標としているのか。
現在の株式や債券の割合はどうなっているのか。
目標年に向け、どのように資産配分が変わるのか。
手数料はいくらか。
こうした点を確認する必要があります。
ターゲットイヤー型は、何も考えずに任せればよい商品ではありません。
自分で見直す負担を減らしながら、運用期間に応じた資産配分の変更を行うための選択肢です。
DCコンサルタントは何をアドバイスするのか?
加入者から、
「結局、どの商品を選べばよいのですか」
と聞かれることがあります。
明確な商品名を答えた方が、親切に見えるかもしれません。
しかし、DCコンサルタントの役割は、全員に同じ商品を勧めることではありません。
特定の商品について個別に売買を勧める行為は、業務範囲や法令にも注意が必要です。
DCコンサルタントが支援するのは、商品を選ぶ前の判断です。
何歳まで運用する予定なのか。
いつから資産を受け取りたいのか。
企業型DC以外にどのような資産があるのか。
どの程度の値下がりなら運用を続けられそうか。
相場が大きく下落したとき、どのような行動を取りそうか。
こうしたことを一緒に整理します。
そのうえで、
外国株式を中心にするのか。
株式の比率を抑え、債券を組み合わせるのか。
バランス型投資信託を利用するのか。
ターゲットイヤー型を使い、受取時期に向けて資産配分を段階的に変えるのか。
受取時期が近い部分を元本確保型へ移すのか。
複数の選択肢を考えます。
大切なのは、最も高いリターンを狙うことではありません。
本人が無理なく続けられる運用を考えることです。
商品に人を合わせるのではありません。
その人の運用期間、資産状況、家計、受取予定、値下がりへの感じ方に合わせて、資産配分を考えます。
「外国株式が一番よい」と答えを決めるのではなく、加入者が自分のリスク許容度を理解し、自分で選択できるようにする。
そこに、DCコンサルタントの価値があります。
正解の商品ではなく、自分に合う判断軸を持つ
企業型DCでは、外国株式の投資信託を選べば正解なのでしょうか。
外国株式は、高いリターンを期待できる有力な選択肢です。
しかし、すべての人に共通する正解ではありません。
若いから株式100%。
50歳を過ぎたから元本確保型や値動きの小さい債券だけ。
過去の成績がよいから、その商品を選ぶ。
このような一つの条件だけでは、適切な判断はできません。
年齢だけでなく、実際の運用期間を見る。
退職時に受け取るのか、受給開始を遅らせるのかを考える。
企業型DC以外の資産や家計の状況を確認する。
値下がりしたとき、自分がどのように感じ、行動するかを知る。
外国株式、債券、バランス型、ターゲットイヤー型、元本確保型などの特徴を理解する。
これらを踏まえ、自分に合う組み合わせを考える必要があります。
企業型DCの投資教育は、人気商品を教える場ではありません。
加入者が、自分の人生と資産全体を踏まえ、自分で選べるようになるための場です。
正解の商品を教えるのではなく、正解を考えるための判断軸を伝えること。
加入者のリスク許容度を踏まえ、無理なく続けられる運用を支援すること。
私は、それがDCコンサルタントに求められる役割だと考えています。

