比較推奨販売の見直しで保険代理店はどう変わる? これからの相談に必要な専門性

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比較推奨販売の見直しでは、お客様の意向に沿って、商品を勧める理由を説明することが求められます。

老後資金や資産形成の相談まで引き受けるなら、保険に加えて年金や資産運用の知識も必要です。

その力を企業の退職金制度や従業員の相談に生かすDCコンサルタントの役割は、これから一層重要になると私は考えています。


比較推奨販売の見直しをどう受け止めるか

2026年8月28日、金融庁は、乗合代理店の比較推奨販売に関するパブリックコメントの結果と、内閣府令・監督指針の改正内容を公表しました。

改正府令の施行と監督指針の適用は、2028年3月1日です。

金融庁は、それまでの間も、可能な限り速やかに体制を整えることが望ましいとしています。

なお、お客様の意向を把握する義務などは、すでにあるものです。

比較推奨販売と聞くと、いくつもの保険会社の商品を並べ、保障内容や保険料を比べる場面を思い浮かべるかもしれません。

もちろん、比較するための商品知識は欠かせません。

ただ、今回の見直しで考えておきたいのは、

その商品を選んだ理由を、お客様の事情に沿って説明できるか

ということです。

改正後の監督指針では、お客様が重視する事項を確認し、商品を選別・推奨する基準や理由を説明することに加え、社内ルール、募集人への教育、記録の保存、実施状況の検証などが示されています。

手数料の高さや便宜供与など、代理店側の都合で商品を選びながら、別の理由を装って説明することにも注意を促しています。

現場では、説明方法や記録の残し方を見直す必要が出てくるでしょう。

忙しい中で対応する負担もあると思います。

それでも、提案する側が

「なぜ、このお客様に、この商品なのか」

と立ち止まる機会にはなります。

私はこのニュースを、保険代理店のこれからの仕事を考えるきっかけとして受け止めました。


「代理店が淘汰される」で話を終わらせたくない

こうした見直しを前に、保険代理店の経営は厳しくなるのではないか、と感じる人もいるでしょう。

教育や管理に必要な時間、人手、費用が増えれば、経営のあり方を考え直す代理店が出てくる可能性はあります。

ただ、今回の改正だけを根拠に、保険代理店が一律に淘汰されるとまでは言えません。

保険を専門に扱う仕事がなくなる、という話でもありません。

事故や病気が起きたときに、契約内容を確認し、必要な手続きにつないでくれる人がいる。

家族構成や事業の変化に合わせて、保障の過不足を考えてくれる人がいる。

そうした仕事には、引き続き大きな意味があります。

むしろ、これまで丁寧に意向を聞き、理由を説明してきた代理店にとっては、自分たちの仕事の質を確かめる機会にもなるはずです。

規模の大小だけで、その質が決まるわけではありません。

一方で、

「いつもこの商品を勧めているから」

という理由で提案しているなら、見直しが必要です。

長くお付き合いしているお客様でも、家族構成や収入、これから必要になるお金は変わります。

以前は合っていた商品が、今も合っているとは限りません。

慣れた相手だからこそ、今の状況や希望を改めて聞くことが大切です。

私は、代理店の数がどうなるか以上に、相談を受ける一人一人が、何を根拠に提案しているのかに関心があります。

それは、DCコンサルタントとして活動する自分にも返ってくる問いです。


保険の相談から始まっても、悩みは保険だけに収まらない

最近お会いしたお客様から、ある保険募集人に

「お金が増えるから」

と、月々の保険料が2万円の変額保険を提案されたというお話を聞きました。

その場でどのような説明があったのか、私が全て把握しているわけではありません。

ただ、そのお話を聞いて気になったのは、その方にどのような保障が必要で、なぜその変額保険を提案されたのか、ということでした。

私は、保険を提案するときには、まず保障の必要性から考えるべきだと思っています。

万一のときに誰の生活を守りたいのか、いくら必要なのか、公的な保障や勤務先の制度、すでに加入している保険でどこまで備えられているのか。

その確認があって、必要な保険を考えられます。

金融庁も、公的保険の保障内容を理解したうえで、必要に応じた民間保険に加入することの重要性を示しています。

先日も、大手企業にお勤めのご夫婦からご相談を受け、勤務先の健康保険組合の付加給付についてお伝えする機会がありました。

付加給付は、健康保険組合が法定給付に上乗せして行う独自の給付です。

内容は組合によって異なりますが、その方々の加入先には充実した給付がありました。

そこで、まず利用できる制度を十分に活かし、それでも備えておきたい部分を民間の保険で補う、という考え方をご説明しました。

すると、

「今までそんなことは誰も教えてくれなかった」

と、感謝の言葉をいただきました。

このとき改めて感じたのは、すでに自分が持っている保障を知ることも、お客様にとって大切な情報なのだということです。

勤務先に制度があっても、その内容や、保険を考えるときにどう役立つのかまでは、ご存じないことがあります。

お客様の意向を確認するときには、不安や希望を伺うとともに、こうした情報もお伝えし、どこまで備えたいかを一緒に確かめる。

そのうえで必要な保険を比較し、提案する。

私は、適切な比較推奨販売には、こうした過程があってこそだと思っています。


変額保険は、必要な保障を確保しながら運用も行いたい人にとって、選択肢になり得ます。

ただし、運用によって必ずお金が増えるわけではありません。

解約返戻金には最低保証がなく、払い込んだ保険料の総額を下回ることもあります。

だからこそ、

「お金が増える」

という説明だけで、その人に合うかどうかを判断することはできません。

必要な保障に加えて、運用のリスクや費用、途中で解約する場合のことまで理解してもらう必要があります。

もし、ご本人の主な目的が老後資金の準備であれば、さらに確認したいことがあります。

勤務先には退職金制度があるのか。

企業型DCには加入しているのか。

NISAでは、すでにどのような資産を持っているのか。

手元の預貯金は足りているのか。

そして、毎月2万円の支払いを、これからも無理なく続けられるのか。

同じ2万円でも、数年後に教育費が大きく増える人と、その準備が終わっている人では考え方が変わります。

十分な預貯金がない人なら、まず手元のお金を確保することから話した方がよい場合もあります。

こうした話を聞いて初めて、保障に充てるお金と、将来のために積み立てるお金をどう考えるかが見えてきます。

その結果、変額保険が合うこともあれば、別の方法や組み合わせを検討した方がよいこともあるでしょう。

私自身、企業型DCの個別相談に対応していると、運用商品の話から、NISAや保険、ライフプラン全体の話につながることがあります。

お客様からすれば、会社のDCも、保険料も、預貯金も、同じ家計の話です。

こちらの取扱業務に合わせて、悩みを分けて持ってきてくださるわけではありません。

保険を提案する場面でも、お客様が何に困り、何に備えたいのかを確認する。

ご本人もうまく言葉にできないときには、丁寧に質問を重ねながら、一緒に整理していく。

そうして見えてきた悩みに応えようとすれば、相談の内容によっては、年金や資産運用の知識も必要になります。

今回のお話は、私にとって、そのことを改めて考えるきっかけになりました。


老後資金の相談を引き受けるなら、学ぶ範囲も広がる

保険の専門家として経験を積んできたことは、大きな財産です。

必要な保障を見極めるには、公的な保障や家族の収入、将来の支出なども理解しなければなりません。

保険だけを専門にしているからといって、その仕事を軽く見るつもりはありません。

ただ、

「金融のプロとして、資産形成や老後のお金も相談してください」

と伝えるなら、それに応えられる準備が必要です。

保険商品の知識だけで、相談のすべてを引き受けるのは難しいと私は考えています。

公的年金や勤務先の退職金は、老後資金を考える土台になります。

企業型DCやiDeCo、NISAについても、制度の名前を知っているだけでは十分ではありません。

利用条件、お金を使える時期、費用、税の扱いなどを確認できる必要があります。

資産運用については、高いリターンを期待できる商品を知っていればよい、というものでもありません。

価格が下がったときに家計が耐えられるか、本人が不安で運用を続けられなくならないか。

受取時期まで、どれくらいの時間があるか。

そうしたことを考えるために、資産配分やリスク許容度の理解が必要になります。

もちろん、今回の比較推奨販売の見直しが、保険募集人全員に企業型DCやNISAのコンサルティングを義務づけたわけではありません。

ここから先は、相談を受ける仕事をどう考えるかという、私自身の持論です。

お客様の老後資金を一緒に考えるなら、自分が扱える商品以外にも目を向けたい。

比較した結果として保険が適しているのであれば、その理由をより具体的に説明できるはずです。

学ぶ範囲を広げることは、保険の専門性を深めることにもつながると思います。


企業型DCには、導入後も続く相談がある

こうした知識や経験を生かせる仕事の一つが、DCコンサルタントです。

企業型DCでは、提示された運用商品の中から加入者自身が商品を選びます。

運用結果は将来の給付額に影響するため、加入者が必要な知識を持つことが重要です。

厚生労働省の制度概要でも、事業主による投資教育の必要性が示されています。

制度が始まってからも、加入者の状況は変わります。

運用を始めたばかりの人と、受け取りが近づいてきた人では、知りたいことも違います。

商品の違いをどう見ればよいのか。

配分変更とスイッチングは何が違うのか。

会社のDCがあっても、自分で老後資金を準備した方がよいのか。

こうした疑問を一つずつ確認していくと、その人の家計や退職後の生活にも話が及びます。

そこで、保険で培ってきたヒアリング力が生きます。

家族のことを聞き、本人も整理できていない不安を言葉にしてもらう。

すぐに結論を出せないときには、確認することを一緒に考える。

制度の説明を相手の生活につなげるには、こうしたやり取りが欠かせません。

企業側との話し合いでも同じです。

既存の退職金制度とDCをどう位置づけるか、従業員に何を伝えるか、担当者がどこで困っているか。

制度を理解した上で、人と話し、実際に運営できるように支える必要があります。

私はDCコンサルタントを、企業の退職金と、従業員一人一人の老後の暮らしをつなげて考える仕事だと捉えています。

そのために、保険、年金、資産運用の知識を行き来できることには意味があります。


DCコンサルタントも、提案する理由を問われる

ここで、私たち自身も気をつけたいことがあります。

保険代理店の販売姿勢を論じながら、DCについては導入ありきで話を進めてしまえば、説得力がありません。

企業の状況や従業員への影響を十分に確認せず、わかりやすいメリットだけを伝えることは避けなければなりません。

加入者の相談でも、

「長期運用ならこの商品でよい」

と一律に答えることには無理があります。

同じ年齢でも、家計の余裕や運用経験、値下がりへの受け止め方は違います。

本人が判断するために何を知る必要があるのかを考え、説明を工夫することが求められます。

また、企業を通じて従業員と接点を持てるからこそ、相談の目的を大事にしたいところです。

DCの説明を聞きに来た人が、いつの間にか別の商品の営業を受けていたと感じるようでは、会社からの信頼も損ないます。

ご本人が希望して保険や資産形成の相談に進む場合には、その意向を確認し、自分の立場や対応できる範囲を明らかにする。

扱う制度が増えるほど、この丁寧さは必要になると思います。

DCコンサルタントという肩書が、そのまま信頼になるわけではありません。

説明の仕方、わからないことへの対応、相談後の確認。

そうした日々の仕事によって、少しずつ信頼を得ていくのだと思います。


全てを知ってから始める必要はない

企業型DCと聞くだけで、

「難しそう」「自分にはまだ早い」

と、とっつきにくさを感じる方もいると思います。

年金制度に運用、企業の退職金まで関わるとなれば、どこから手をつければよいか迷うのも無理はありません。

確かに、勉強は必要です。

お客様の大切なお金について話す以上、曖昧な知識のまま言い切ることはできません。

ただ、最初から全ての相談に答えられる人はいないでしょう。

まずは、企業型DCの基本的な仕組みを知るところからでよいと思います。

今日は会社と従業員それぞれの役割を確認する。

次は、配分変更とスイッチングの違いを、人に説明できるようにする。

一つ疑問が出てきたら、資料を調べたり、経験のある人に聞いたりして確かめる。

そのくらいの小さな学びでも、続けていけば理解は深まります。

一日ごとの変化は、自分ではわかりにくいものです。

それでも、振り返ると、以前は意味がわからなかった資料を読めるようになっている。

お客様の話を聞いて、

「勤務先の退職金も確認した方がよさそうだ」

と気づけるようになっている。

そうした変化の中に、積み重ねてきたものが表れます。

知識が増えるにつれて、相談で聞けることや、説明できることも増えていきます。

一つひとつは小さくても、それらをお客様の状況に合わせて使えるようになることが、コンサルティング力につながるのだと思います。

保険募集の経験があれば、すでに身につけているものもあります。

話しにくいお金のことを聞く難しさや、説明したつもりでも伝わっていないことがある、という感覚です。

その経験は、新しい分野でも役に立ちます。

全てを自分一人で担当する必要もありません。

具体的な商品提案や個別の税務判断などは、それぞれの登録・資格等に応じた範囲で対応し、必要な専門家につなぎます。

自分の専門外に気づけることも、知識を身につける意味の一つです。

「お客様の役に立ちたい」

という気持ちがあるなら、今の知識の量だけで、自分に向いているかどうかを決めなくてもよいと思います。

目の前の疑問を一つずつ確かめていく。

その時間が、後になって自分を支える力になります。


まとめ

比較推奨販売の見直しは、保険代理店にとって、日々の説明や業務の進め方を確かめる機会です。

そして、老後資金や資産形成の相談まで引き受けるなら、自分の知識がその範囲に届いているかも考えておきたいところです。

保険で積んできた経験に、年金や資産運用の知識を重ねていく。

その力を企業の退職金制度や従業員への金融教育に生かせるDCコンサルタントの役割は、今後一層重要になると私は考えています。

相談を終えた人が、自分の家計や老後について、前より少しわかるようになっている。

次に何を確認すればよいかが見えている。

そんな仕事を重ねられるよう、私自身も学び続けたいと思います。